換価分割とは?不動産を現金化して公平に分ける手続きとメリット・デメリット
不動産相続では、 ・「土地・実家をどのように分割するか決められない」 ・「相続人全員が不動産はい...
不動産相続でよく起きるのが、「売るか、残すか、誰が使うか」が決まらず、ひとまず共有名義(共有分割)にしてしまうケースです。
共有分割は、短期的には「公平に見える」「相続人同士の話し合いを終わらせやすい」一方で、将来の売却・建替え・管理のたびに共有者の合意が必要となり、トラブルが生じやすい方法でもあります。共有のルール自体も、法律で「管理は持分の過半数」「変更・処分は原則全員同意」などの決まりがあります(民法251条、252条)。
【法務省HP『共有制度の見直し(1)』】
https://www.moj.go.jp/content/001293295.pdf
この記事では、不動産の遺産分割で共有分割を検討している方に向けて、
・共有分割とは何か(他の分割方法との違い)
・共有分割が起きやすいケース
・メリット・デメリット(税務面も含む)
・典型的なトラブルと注意点(同意が必要な行為の整理)
・共有状態の解消方法(共有物分割請求など)
を、できるだけやさしい言葉で整理します。
この記事のライター
菊地 正志
江戸川葛西相続法律事務所の代表弁護士。第一東京弁護士会所属。株式や不動産の遺産分割や相続トラブルを得意とする。全弁護士の1%以下しかいない弁護士、税理士、会計士準会員の「トリプルライセンス」を保有している。小学生の頃に水球を始め、そこで培ったタフな交渉力が強み。明治大学法学部卒業・明治大学法科大学院卒業。
目次
共有分割とは、不動産を複数の相続人が持分(割合)を決めて、共有名義で取得する遺産分割方法です。登記では「A:2分の1、B:4分の1、C:4分の1」のように、持分を設定します。
遺産分割の方法は大きく4つあります。
| 分割方法 | 概要 | つまずきやすい点 |
|---|---|---|
| 現物分割 | 不動産をそのまま誰かが取得、または土地を分筆して分ける | 不公平感/分筆できない・価値が落ちる |
| 代償分割 | 取得者が不動産を取り、他の相続人に代償金を払う | 取得者の資金力/評価で揉める |
| 換価分割 | 不動産を売却して現金化し分配 | 売却の手間/売却できないリスク |
| 共有分割 | 持分を決めて共有名義にする | 将来の管理・売却が難しくなりやすい |
共有分割は「他の方法が取りにくい」「相続人間の話し合いがまとまらない」などの事情で、最終手段として選ばれることが多いです。
【SMBC信託銀行HP『遺産相続における不動産の分割』】
https://www.smbctb.co.jp/service/sozoku/hajimete-sozoku/05/
共有分割は、次のような場面で起こりがちです。
また、手続き面では相続登記が必須です。相続登記は原則として義務化されており、正当な理由なく怠ると過料(10万円以下)の対象となり得ます。
【法務省HP『相続登記の申請義務化について』】
https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00599.html
共有分割には、確かにメリットに見える点もあります。ポイントは「短期メリット」と「長期リスク」を分けて理解することです。
1) 形式的に公平に見えやすい
法定相続分どおりに持分を設定しやすく、相続人の不満を抑えやすい場合があります。
2) 収益不動産なら家賃を持分で分けられる
賃貸アパート等なら、持分割合に応じて家賃収入を分配する設計ができます。
3) 売却時の税制(3,000万円特別控除)が「共有者ごと」に使える可能性
共有のマイホームを売った場合、譲渡所得の計算は持分に応じて行い、一定要件を満たす共有者なら「1人につき最高3,000万円」の特別控除が適用され得ます。
(※家屋の所有関係などで適用可否が分かれる点は要注意です。)
【国税庁HP『No.3308 共有のマイホームを売ったとき』】
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3308.htm
共有分割で頭を悩ませるのは、決めたいときに決められない状態が続くことです。
1) 売却・建替えなどは原則「全員同意」が必要
共有物の「変更や処分」は共有者全員の同意が必要、管理は持分の価格に従って過半数で決定する、という枠組みが基本です。
つまり、1人でも反対または連絡不能だと、不動産の売却や大きな活用が止まりやすくなります。
2) 相続が重なるほど、共有者が増えて権利関係が複雑化
共有者が次世代に移るたびに人数が増え、合意形成が難しくなります。
3) 固定資産税・修繕費・管理の負担で揉めやすい
「誰が管理する?」「修繕費を払わない人がいる」など、生活実務のズレがトラブルとなりえます。
4) 共有者の認知症・死亡・所在不明が致命傷になり得る
合意が必要な局面で、共有者の判断能力が問題になると、手続きが一気に難しくなります(成年後見等が必要になるケースも)。
5) 相続税の特例が“全員に同じように効く”とは限らない
たとえば小規模宅地等の特例は、適用要件や取得者の状況によって結果が変わり得ます。国税庁は制度概要を示しています。
また、共有取得のケースでの取り扱いを示した解釈事例も公開されています。
【国税庁HP『No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例』】
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4124.htm
【国税庁HP『8 被相続人等の居住用宅地等を共有で取得し、その1人に小規模宅地等の特例の適用がある場合』】
https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sozoku/100713/08.htm
事例1:共有者の1人が「持分だけ」第三者に売ってしまう
持分は売却できるため、知らない第三者が共有者になり、不動産の管理や売却がさらに困難になります。
事例2:1人だけが住んでいて、他の共有者が不満
「使用ルール」「費用負担」「賃料相当の考え方」などを、早い段階で文書にするとトラブルを回避できる可能性があります。
事例3:どこまでが“管理”で、どこからが“変更”なのかで対立
共有の意思決定は大枠として、
というルールを前提に整理します。
(※改正で「軽微変更」の類型が整備されている点も、法務省資料に示されています。)
【法務省HP『民法等の一部を改正する法律の施行に伴う不動産登記事務の取扱いにつ いて(民法改正関係)(通達)』】https://www.moj.go.jp/content/001394383.pdf
【法務省HP『相続登記の申請義務化について』】
https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00599.html
共有にする場合でも、「いつ・どうやって共有を解消するか(出口戦略)」をセットで決めるのが重要です。
| 解消方法 | 概要 | 向いている場面 |
|---|---|---|
| 現物分割(分筆等) | 土地を分けて単独所有に | 分筆しても利用価値が落ちにくい |
| 持分の売買・譲渡 | 1人が他の持分を買い取る等 | 資金力がある取得者がいる |
| 換価(売却) | 物件を売って現金で分ける | 誰も使わない/管理が重い |
| 共有物分割請求 | 協議が整わないとき裁判所に分割を求める | 話し合いが完全に行き詰まり |
※調停・訴訟に発展するおそれがあり、時間と費用がかかるため、できる限り協議段階での整理が望ましいです。
【法務省HP『共有制度の見直し(3)』】
https://www.moj.go.jp/content/001306021.pdf
「共有を避けたいが、どうすれば?」という方は、次の選択肢を比較して検討すると整理が進みます。
共有分割は「いま揉めない」代わりに、「将来もっと大きく揉める」リスクを抱えやすい分割方法です。共有ルール(管理は過半数、変更・処分は原則全員同意)を前提に、出口まで設計する必要があります。
江戸川葛西相続法律事務所では、
まで、状況に応じてサポートできます。
江戸川葛西相続法律事務所は、東京都江戸川区の東西線・西葛西駅に所在し、共有分割を含む遺産分割や相続税を見据えた相続対策に強みを持つ、日本に150人程度しかいない弁護士、税理士、日本公認会計士協会準会員のトリプルライセンスを保有する代表が運営する法律事務所です。
相続財産の価格の算定や、代償分割・現物分割・換価分割・共有分割の選択や相続人間の対応など、遺産分割特有の問題にも豊富な実務経験があります。
相続人間の話し合いが難航しているケースや、登記の手続きに不安がある場合も、法的観点から適切にサポートいたします。
相続や遺産分割でお悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。