遺産分割で投資信託をどう分ける?手続き・評価・税務まで徹底解説

被相続人が投資信託を保有していた場合、その金融資産も当然ながら相続財産の一部となります。
しかし、投資信託は預貯金と異なり、価格が日々変動する金融商品であるため、遺産分割の方法や評価のタイミングでトラブルになるケースも少なくありません。

実際の相続では、
・投資信託は遺産分割の対象になるのか
・相続人全員でどのように分けるのか
・投資信託を解約して現金化すべきか
・投資信託の相続税の評価額はどう決まるのか
といった疑問が多く生じます。

本記事では、
・投資信託の相続の仕組み
・遺産分割の方法
・相続手続きの流れ
・相続税評価のポイント
について、弁護士の視点からわかりやすく解説します。

遺産分割で投資信託をどう分ける?手続き・評価・税務まで徹底解説
菊地 正志

この記事のライター

菊地 正志

江戸川葛西相続法律事務所の代表弁護士。第一東京弁護士会所属。株式や不動産の遺産分割や相続トラブルを得意とする。全弁護士の1%以下しかいない弁護士、税理士、会計士準会員の「トリプルライセンス」を保有している。小学生の頃に水球を始め、そこで培ったタフな交渉力が強み。明治大学法学部卒業・明治大学法科大学院卒業。

投資信託は遺産分割の対象になる

投資信託と受益権の基礎

投資信託とは、多数の投資家から資金を集め、運用会社が株式や債券などに投資して運用する金融商品です。

投資信託を購入した人は「受益権」という権利を持ちます。
この受益権には次のような財産的価値があります。

  • 分配金を受け取る権利
  • 投資信託を解約する権利
  • 運用状況の情報を確認する権利

そのため、受益権は相続財産として遺産分割の対象になります。
【一般社団法人 投資信託協会HP『投資信託の仕組み』】
https://www.toushin.or.jp/investmenttrust/about/scheme/

投資信託は「当然分割」されない理由

預貯金とは異なり、投資信託は被相続人が死亡して相続発生と同時に自動的に分割されるわけではありません

最高裁判所は2014年2月25日の判決で、「投資信託の受益権は当然分割される財産ではなく、遺産分割の対象となる」と判断しています。

つまり、投資信託を相続する場合は
・遺言書
または
・相続人全員による遺産分割協議
によって承継者を決める必要があります。

【裁判所HP『平成23年(受)第2250号 共有物分割請求事件 平成26年2月25日 第三小法廷判決 』】
https://www.courts.go.jp/assets/hanrei/hanrei-pdf-83978.pdf

投資信託相続の進め方と遺産分割方法

遺言書がある場合

遺言書がある場合は、原則として遺言の内容に従って投資信託を承継します。

ただし次の点には注意が必要です。

  • 他の相続人の遺留分を侵害していないか
  • 相続人の確定(被相続人の戸籍収集)
  • 証券会社の相続手続き

被相続人の遺言があっても、金融機関の手続きは必要になります。

遺言書がない場合:遺産分割協議

遺言書がない場合は、相続人全員による遺産分割協議で分配方法を決めます。
一般的な分け方は次のとおりです。

  • 1人が投資信託を相続
  • 他の相続人に代償金を支払う

投資信託は金融商品であるため、共有状態にすると管理や売却が複雑になることがあります。
そのため実務では、1つの投資信託は1人が取得する方法(代償分割)がよく採用されています。
遺産分割協議書には次の情報を記載します。

  • 証券会社名
  • 投資信託名
  • 銘柄コード
  • 口数
  • 評価基準日

現物分割・代償分割・換価分割の比較

分割方法 内容 特徴
現物分割 投資信託を分割して相続 手続きが可能な金融機関のみ
代償分割 1人が取得し代償金を支払う 実務で最も多い
換価分割 解約して現金で分ける 公平だが手数料が発生

協議がまとまらない場合:調停・審判

相続人同士の協議がまとまらない場合は、家庭裁判所で遺産分割調停を申し立てることになります。

調停でも解決しない場合は、遺産分割審判によって裁判所が分割方法を決定します。

【裁判所HP『調停のしおり』】
https://www.courts.go.jp/kyoto/vc-files/kyoto/file/030410_Bunkatsu_Shiori.pdf

【裁判所HP『遺産分割調停(審判)を申し立てる方へ』】
https://www.courts.go.jp/tokyo-f/vc-files/tokyo-f/file/H3005_01.pdf

相続手続きの流れ

資産調査と金融機関の特定

まずは被相続人が保有していた投資信託を調査します。
主な確認方法は以下のとおりです。

  • 郵送書類
  • 銀行通帳
  • 証券会社の取引報告書
  • メール通知
  • スマートフォンの証券アプリ

近年は電子交付の取引報告書が増えているため、メールの確認も重要です。

必要書類の準備

証券会社で相続手続きを行う際には、次の書類が必要になります。

主な書類

  • 被相続人の戸籍
  • 相続人の戸籍
  • 相続人全員の印鑑証明書
  • 遺産分割協議書
  • 残高証明書

金融機関によって必要書類が異なるため、事前確認が必要です。

【野村証券HP『相続のお手続き』】
https://www.nomura.co.jp/support/procedure/inheritance/

【SBI証券HP『相続手続き』】
https://www.sbisec.co.jp/ETGate/?_ControlID=WPLETmgR001Control&_PageID=WPLETmgR001Mdtl30&_ActionID=DefaultAID&_DataStoreID=DSWPLETmgR001Control&OutSide=on&getFlg=on&cat1=home&cat2=service&burl=search_home&dir=service&file=home_inheritance.html

口座開設・名義変更の手続き

投資信託は、相続人名義の証券口座へ移管する必要があります。

そのため

  1. 相続人の証券口座を開設
  2. 名義変更手続き
  3. 投資信託の移管

という流れになります。

手続き期間は通常2週間~4か月程度かかる場合があります。

【楽天証券HP『相続のお手続き』】
https://www.rakuten-sec.co.jp/web/support/inheritance/

【SMBC日興証券HP『当社での相続手続きのご案内』】
https://www.smbcnikko.co.jp/service/inheritance/procedure/

解約・換価分割を行う場合の注意点

投資信託を売却して分割する場合は、次の点に注意します。

  • 信託財産留保額
  • 解約手数料
  • 売却タイミング

投資信託の評価額は、相続発生日(死亡日)の基準価額を基準に算定します。
そのため、相続後に価格が上がっても、相続税額は変わりません。

投資信託の相続税評価と税務ポイント

相続税評価の基本

投資信託は相続税法上の財産として評価されます。

評価方法
基準価額 × 口数 − 解約費用
また、

  • 未収分配金
  • 源泉所得税

なども調整して評価します。

【国税庁HP『No.4644 貸付信託・証券投資信託の評価』】
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hyoka/4644.htm

市場価格変動と代償金のリスク

投資信託は日々価格が変動するため、

  • 遺産分割協議の長期化
  • 市場変動

によって、相続人間で不公平感が生じることがあります。

そのため協議書には

  • 評価基準日
  • 代償金額

を明確に記載することが重要です。

投資信託相続をスムーズに進めるためのポイント

専門家への相談を活用する

投資信託の相続は、

  • 金融機関の手続き
  • 税務処理
  • 遺産分割

が複雑に絡みます。

弁護士や税理士など専門家に相談することで、

  • 手続きの漏れ防止
  • トラブル回避
  • 税務リスクの回避

につながります。

遺言書や遺産分割協議書の作成方法

投資信託を保有している場合、遺言書で承継先を指定しておくと遺産分割トラブルを防ぐことができます。遺産分割協議書には、

  • 証券会社名
  • ファンド名
  • 口数
  • 評価日
  • 代償金

を具体的に記載します。

他の財産とのバランス調整

投資信託は価格変動があるため、

  • 不動産
  • 預貯金

などの安定資産と組み合わせて分割すると公平性を保ちやすくなります。

まとめ

投資信託は相続財産に含まれ、遺産分割の対象になります。
ただし預金と異なり、

  • 自動的に分割されない
  • 価格が変動する
  • 証券会社ごとの手続きがある

などの特徴があります。

主な分割方法は次の3つです。

  • 現物分割
  • 代償分割
  • 換価分割

相続人間で遺産分割協議がまとまらない場合は、家庭裁判所の遺産分割調停や遺産分割審判で解決することになります。

江戸川葛西相続法律事務所へ!

投資信託の相続では、

  • 遺産分割トラブル
  • 相続人間の意見対立
  • 相続手続きの複雑化

などの問題が起こることがあります。

江戸川葛西相続法律事務所は、東京都江戸川区の東西線・西葛西駅に所在し、投資信託を含む遺産分割や相続税を見据えた相続対策に強みを持つ、日本に150人程度しかいない弁護士、税理士、日本公認会計士協会準会員のトリプルライセンスを保有する代表が運営する法律事務所です。

投資信託の価格の算定や、投資信託の代償分割・現物分割・換価分割の選択や会社から他の相続人への対応など、投資信託の相続特有の問題にも豊富な実務経験があります。

相続人間の話し合いが難航しているケースや、証券会社での手続きに不安がある場合も、法的観点から適切にサポートいたします。

投資信託の遺産分割相続でお悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。

よくある質問

投資信託は相続人で自動的に分割されますか?
いいえ。投資信託は当然分割されないため、遺産分割協議が必要です。
投資信託は売却しないと相続できませんか?
売却せずに名義変更することも可能です。ただし金融機関の手続きが必要になります。
投資信託の相続税評価はどう決まりますか?
死亡日の基準価額をもとに、解約費用などを差し引いて評価します。

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