株式の相続税評価額はいくら?「最も低い株価」を選んで節税する計算方法と注意点
親が株式投資をしていて、 「相続が発生した」「そろそろ相続対策を考えたい」 そんなときに気...
本記事は「遺産分割 有価証券」をメインテーマに、株式・投資信託・公社債などの有価証券を相続する場面で、どう遺産分割を進めればよいか、どこに注意すべきかを知りたい方に向けた解説です。
有価証券は預貯金と違い、①価格が日々変動する、②証券会社の手続き(口座・移管・名義変更)が必要、③売却すると譲渡所得税が発生する、④非上場株式では会社法対応(譲渡制限・売渡請求)まで絡む、という特徴があります。そのため「遺産分割協議はまとまったのに、証券会社の手続きが進まない」「評価額の決め方でもめる」「売却のタイミングで取り分が変わる」など、相続人間のトラブルが起こりやすい分野です。
この記事を読むと、(1)有価証券が遺産分割の対象になる理由と放置リスク、(2)証券会社での手続きの全体像と必要書類、(3)現物分割・代償分割・換価分割の選び方、(4)株式・公社債・投資信託の評価、(5)売却と税金、(6)特別口座・非上場株式・口座不明時の調査方法まで、知識ゼロの方でも一通り理解できるようになります。
この記事のライター
菊地 正志
江戸川葛西相続法律事務所の代表弁護士。第一東京弁護士会所属。株式や不動産の遺産分割や相続トラブルを得意とする。全弁護士の1%以下しかいない弁護士、税理士、会計士準会員の「トリプルライセンス」を保有している。小学生の頃に水球を始め、そこで培ったタフな交渉力が強み。明治大学法学部卒業・明治大学法科大学院卒業。
目次
有価証券(株式・投資信託・公社債など)は、預貯金や不動産と同様に相続財産(遺産)に含まれ、遺産分割の対象です。被相続人が亡くなると、遺産分割が成立するまでの間は、原則として相続人全員の共有状態が続きます。
共有のまま放置すると、次のような不利益が生じやすくなります。
・証券会社では口座名義人死亡後に口座が凍結され、売買や出金ができない
・値動きがあるため、分割が長期化すると評価時点(いつの価格で分けるか)で揉めやすい
・相続人の一部が協議に協力しないと名義変更や売却が進まない
また、有価証券は「自動的に法定相続分で分割される」と誤解されがちですが、最高裁判決(平成26年2月25日)を踏まえ、遺産分割協議で帰属を確定させる必要があるという理解が実務で定着しています。
(出典:裁判所 裁判例検索システム https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/search1)
有価証券の種類ごとの特徴(概要)
・上場株式:2009年の株券電子化により、権利は口座で電子的に管理され、紙の株券は原則無効です。(出典:日本証券業協会「株券の電子化」 https://www.jsda.or.jp/shijyo/minasama/kessai/index.html)
・非上場株式:証券会社ではなく発行会社(株主名簿管理人)で手続きするのが一般的です。譲渡制限株式では会社側の対応(承認・売渡請求)が争点になることがあります。
・投資信託:基準価額を基礎に評価するのが基本。上場投資信託(ETF)は上場株式の評価に準じる扱いが示されています。(出典:国税庁 No.4644 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hyoka/4644.htm)
・公社債:利付債・割引債や上場・非上場で評価式が異なります。(出典:国税庁 No.4641 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hyoka/4641.htm)
遺言書がある場合は原則として遺言内容が優先されますが、遺留分を侵害する場合には遺留分侵害額請求で調整される可能性があります。
有価証券の相続手続きは、大きく「調査 → 協議(または遺言) → 名義変更(移管) →(必要なら)売却 → 分配」という流れです。証券会社ごとに提出書類は多少異なりますが、全体像は共通しています。
被相続人の出生から死亡までの戸籍(除籍・改製原戸籍含む)を取得し、法定相続人を確定します。
取引報告書、配当通知、銀行入金履歴、証券アプリなどから証券会社を特定します。証券会社が不明な場合は、JASDECの登録済加入者情報開示請求で口座管理機関を確認できます。
(出典:JASDEC https://www.jasdec.com/procedure/shareholders/disclosure/index.html)
証券会社が判明したら、まず「口座名義人が死亡した旨」を届け出ます。これにより口座は凍結され、売買や出金は停止されます。
その後、遺産分割協議および相続税申告に必要となる「残高証明書」を発行してもらいます。残高証明書には、銘柄名、数量、評価額(基準日)、口座種別などが記載されます。
【残高証明取得に通常必要となる書類(一般例)】
・被相続人の死亡記載のある戸籍(除籍謄本等)
・請求者が相続人であることを示す戸籍
・請求者の本人確認書類
・印鑑証明書
※証券会社ごとに異なります。
残高証明は「評価基準日」を指定できる場合があります。相続税評価では死亡日時点が基準となります。上場株式の評価方法については国税庁が整理しています。
(上場株式評価 出典:国税庁 No.4632 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hyoka/4632.htm)
上場株式は2009年の株券電子化により電子管理されています。そのため、紙の株券提出は原則不要で、証券会社口座ベースで残高証明が発行されます。
(出典:日本証券業協会 https://www.jsda.or.jp/shijyo/minasama/kessai/index.html)
有価証券は当然に法定相続分で確定分割されるわけではなく、遺産分割協議で帰属を決めるのが原則です。
(参考:裁判所 裁判例検索システム https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/search1)
遺言がある場合は原則として遺言内容どおりに手続きを進めます。遺言がない場合は相続人全員で遺産分割協議を行います。
協議書の記載が曖昧だと証券会社手続きで差し戻されやすいため、次のように具体的に記載します。
・証券会社名/支店名/口座番号
・銘柄名(コード)/数量(株数・口数)
・相続人全員の署名押印(実印)と印鑑証明書
有価証券を保有・売却するには相続人名義の証券口座が必要です。
被相続人名義のまま売却することは通常できません。
必要書類は証券会社所定書類、戸籍、印鑑証明書、遺言書または協議書などです。
手続き完了まで2〜3週間程度かかるのが一般的です。
有価証券の遺産分割では、主に「現物分割」「代償分割」「換価分割」の3つを検討します。相続人の希望(運用したい/現金化したい)や公平性、税金、手続きの負担を比較して選びます。
分割方法の比較(要点)
| 分割方法 | 概要 | メリット | デメリット | 向いているケース |
|---|---|---|---|---|
| 現物分割 | 銘柄(または数量)をそのまま配分 | 売却不要/保有継続できる | 価格差で不公平感/口座が複数必要 | 複数銘柄があり各相続人が運用希望 |
| 代償分割 | 1人が取得し他へ代償金を支払う | 経営権維持/事業承継に適する | 資金調達が必要/評価で揉めやすい | 非上場株式・経営承継 |
| 換価分割 | 売却して現金で分配 | 公平に分けやすい/分かりやすい | 売却時期で差/税・手数料 | 現金化したい/相続人が多い |
現物分割は、株式や投資信託を売却せず、そのまま相続人に振り分ける方法です。複数銘柄がある場合、相続人ごとに銘柄を割り当てたり、同一銘柄を株数で割ったりします。
注意点は、公平性です。協議時点で評価額を揃えても、将来の値動きで差が開くため「結果的に不公平になった」と感じることがあります。公平性を重視する場合は、協議時点の評価で調整金(不足分を現金で調整)を入れるなどの工夫が有効です。
代償分割は、1人の相続人が有価証券を取得し、他の相続人に代償金を支払うことで公平を図る方法です。特に非上場株式では、経営権維持や事業承継の観点から代償分割が選ばれやすいです。
重要なのは、代償金を遺産分割協議書に明記すること、そして評価方法(いつの時点の、どの評価で算定するか)を合意しておくことです。非上場株式の税務評価の考え方は国税庁が整理しています。
(出典:国税庁 No.4638 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hyoka/4638.htm)
【数値例】
・非上場株式の合意評価:2,000万円
・相続人2名(各1/2)で、長男が全株取得
→ 長男が長女へ代償金1,000万円を支払う(分割払い等も合意可能)
換価分割は、有価証券を売却して現金化し、その代金を分配する方法です。現金で分けられるため公平性が高く、相続人が多い場合にも有効です。
現物分割が不可能・不相当であり、かつ代償金の支払い能力を有する相続人がいない場合、取得希望者がいない場合において代償分割も困難な場合に換価分割が選択されます。(参考:遺産相続事件処理マニュアル(新日本法規出版))
また、売却益が出ると譲渡所得税がかかります(次章)。
評価は「遺産分割協議での公平性」と「相続税申告での税務評価」を切り分けると理解しやすいです。協議では相続人全員が合意できる評価方法を採用できますが、相続税では国税庁の評価ルールに従います。
【上場株式(相続税評価)】
国税庁は上場株式の評価について、死亡日の終値を基本としつつ、死亡月・前月・前々月の終値平均のうち最も低い価額を用いる仕組みを示しています。
(出典:国税庁 No.4632 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hyoka/4632.htm)
【簡易シミュレーション】
・死亡日の終値:2,000円
・死亡月平均:1,950円
・前月平均:1,800円
・前々月平均:1,900円
→ 最も低い前月平均1,800円を採用(国税庁の考え方)。
【非上場株式(相続税評価)】
取引相場のない株式の評価は、会社規模等に応じて類似業種比準方式・純資産価額方式などで算定します。(出典:国税庁 No.4638 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hyoka/4638.htm)
非上場株式は評価が複雑で、遺産分割(公平性)と相続税評価(税務)の両方を見ながら合意形成するのが実務上のポイントです。
公社債(国債・地方債・社債など)は、利付債・割引債、上場・非上場で評価式が異なります。国税庁は区分ごとの評価方法(経過利息の扱い等)を整理しています。(出典:国税庁 No.4641 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hyoka/4641.htm)
証券投資信託(一般的な投資信託)は、死亡日に解約した場合の受取価額を基礎に評価するのが原則です。源泉税相当額や信託財産留保額等の控除の考え方も国税庁が示しています。(出典:国税庁 No.4644 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hyoka/4644.htm)
上場投資信託(ETF)は、上場株式の評価に準じる扱いが示されています。(同:国税庁 No.4644 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hyoka/4644.htm)
株式等の譲渡所得は申告分離課税です。
(出典:国税庁 No.1463 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1463.htm)
税率は原則20.315%です。
譲渡損失の損益通算制度もあります。
(出典:国税庁 No.1474 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1474.htm)
実務で詰まりやすいのが、(1)上場株式の特別口座、(2)非上場株式の譲渡制限・会社対応、(3)口座不明時の調査です。ここを先に押さえると、手続きの停滞を避けやすくなります。
また、特別口座株式の相続、譲渡制限株式、売渡請求などは高度な判断が必要であり、特に非上場株式では評価と会社対応が重要になります。
上場株式が特別口座で管理されている場合、相続人名義の証券口座へ振替手続きが必要です。
(出典:日本証券業協会 https://www.jsda.or.jp/shijyo/minasama/kessai/index.html)
非上場株式は発行会社が管理し、株主名簿の書換手続きを行います。
定款に譲渡制限がある場合は会社の承認や売渡請求が関係します。
被相続人の証券口座が不明な場合は、JASDECの「登録済加入者情報の開示請求」で口座管理機関(証券会社等)を調査できます。(出典:JASDEC https://www.jasdec.com/procedure/shareholders/disclosure/index.html)
調査の実務チェックリスト
・配当金計算書、株主総会資料、信託銀行等の郵送物
・年間取引報告書(特定口座年間取引報告書)
・銀行口座の入出金(配当・分配金)
・スマホの証券アプリ、メール通知
開示請求で口座管理機関が判明したら、該当の証券会社へ残高証明の取得依頼→名義変更手続きへ進みます。(出典:JASDEC https://www.jasdec.com/procedure/shareholders/disclosure/index.html)
有価証券の遺産分割は、法務・税務・評価が複雑に絡み合う分野です。特に非上場株式が含まれる場合は専門家への相談が重要です。
江戸川葛西相続法律事務所は、非上場株式を含む遺産分割や相続税を見据えた相続対策に強みを持つ、日本に150人程度しかいない弁護士、税理士、日本公認会計士協会準会員のトリプルライセンスを保有する代表が運営する法律事務所です。
非上場株式の価格の算定や、代償分割・現物分割・換価分割の選択や会社から相続人に対する売渡請求の対応など、非上場株式相続特有の問題にも豊富な実務経験があります。
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